(完)嘘で溢れた恋に涙する
償わなければいけない。


傷を、一生消えない傷を合わせてしまった全ての人たちに対して、私は償い続けなければならない。



「あっそ。だから?」



軽い口調でそう言い返した私に理玖は口を少し開けた。



「は?」



「あんたがあたしの正体知っていることも、復讐のために近づいてきたこともわかってたし。
まああんたそれなりにイケメンだから遊んでやっただけ。
あんたが言う通り、あれから人殺しの娘として扱われてきたよ。
だけどさあ、所詮庶民の攻撃にあたしが傷つくわけないでしょ」




「お前…」




理玖の顔が赤くなってゆく。




そう、この調子だ。


あと少し、絶対泣いちゃだめ。




「クラスメイトたちとか何あのイモって感じだし。
あんたも転校してきた時、思ったでしょ?
ダサいし、キモいし、友達なんて一度も思ったことないわよ。
そもそもさあ、あたしがあんたを好きになるわけないじゃない。
あたしにこんな不便な思いさせてんのは元々あんたなんだから」




これでトドメだ。




これを言えば私はもう二度と理玖と目を合わせることも、話すこともできなくなる。




それでもいい。




私は理玖が幸せになることしか望まない。





「だいたいさ、お父さんの罪はお父さんのもので、私のせいにされても困るんだけど。
ちょっとお門違いなんじゃない」




そう言って、笑みを浮かべた瞬間、理玖の振り上げられた手が真っ直ぐに私の頬に向かってきて、強い衝撃を感じた。




グーで殴られたのは初めてだなあなんてしみじみと思いながら、水たまりに倒れこんだ。




「これで気が済んだ?」




それでもそう言ってニヤニヤと笑う私に、理玖は奥歯をギリギリと噛み締めながら私を見下ろした。




「お前なんか死ねばいい」





その言葉が飛び出したのはさほど時間が経たないうちだった。



それだけ言うと、理玖はタオルを私に投げ捨てて、そのまま玄関の戸をぴしゃりと閉めた。





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