(完)嘘で溢れた恋に涙する
使用人がたまたまいなくて、お母さんがその電話を取った。



だんだんとその顔が青白くなってゆくのがわかった。



誰か親戚でも亡くなったのだろうかぐらいに考えていた私は、電話を切ったお母さんから発せられた言葉を信じることができなかった。




「お父さんが…昨日のひき逃げ事故の犯人として捕まったって…」




一言じゃ理解できなかった。



冗談を言うような人じゃないことはわかってた。
逮捕だなんて、そんなハードな嘘付くはずない。
なによりもお母さんのその青ざめた表情がそれが事実であることを物語っていた。


その時、テレビから速報を知らせるベルが鳴った。


横目でちらりとその画面を見ると、お父さんの名前がはっきりと映っていた。


その後リアルタイムでニュースを伝えていたアナウンサーが慌てた様子で横から紙を受け取り、読み上げ始めた。


「速報です。株式会社サマラスの社長である高島秀徳さんがひき逃げ事件の容疑者として今日逮捕されたそうです。
この事件は昨日起きたものであり…


被害者である親子は本日死亡が確認されたと言うことです。」




死亡。




つまりお父さんが人を殺したということだ。




理解したくないのに、すぐにその結論に至ってしまった自分の頭が憎かった。




いつのまにか周りの音が聞こえなくなっていて、呆然とただテレビの画面を見つめていた。




「嘘でしょ」




こぼれたのはそんな呟きだった。



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