(完)嘘で溢れた恋に涙する
すると、急に耳障りな音が聞こえて、驚いて隣を見ると、隣の生徒が机を私の方に寄せてくれていた。


教科書を見せてくれようとしているんだと理解して、慌てて私も腰を浮かせて自分の机を両手で掴んだところではっと気づいた。


隣の生徒は、城島陸玖だった。


焦りすぎて全く気づいてなかった。


どうしよう、彼と普通に話せる自信がない。


戸惑っていると、ちょうどよく先生が気づいてくれた。


「おい、そこ何してんだ」



堅物そうな国語の先生が眉間にしわを寄せて訪ねてくる。



「え、由姫が教科書持ってないみたいなんで」



理玖はキョトンとした顔で返事する。



先生はその言葉に思い出したように声を上げて私の方を見た。



「そうか、坂井は教科書がまだ届いてないんだったな。すまなかった」



本当に申し訳なさそうに謝られるから、全力で首と手を振って私も頭を下げた。


元はと言えば私が申し出るのを忘れていたのが悪い。



「じゃあ、城島見せてやってくれ」


そう指示されると、へーいと陸玖は軽く返事をして、机の境目に教科書を置いてくれた。


大人しく見せられていて良いのだろうかと迷ったけど、今ここで私が自分の動揺を理由に騒いでも迷惑をかけるだけだ。


ノートの端にありがとうと書いて見せてから軽く頭を下げて、少し体を中央に寄せて教科書を覗き込んだ。

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