(完)嘘で溢れた恋に涙する
心が折れる音がした。



比喩じゃなくて、本当に聞こえた。









その子が言ったことは全て当たっていた。





私は気付いていた。




うちの家族がおかしいことに。




家に帰ってきても、ほとんど会話をしないお父さんとの関係は間違っていること。




普通がどの基準かはわからないけれど、少なくとも私の周りの子たちは親と毎日コミュニケーションを取り合っていた。



だけど、気づいていないふりをして、これがうちにとっての普通なんだと誤魔化した。



面倒だったからだ。



裕福で、楽で、自由な生活を壊したくなかった。



でも、その生活は確かに、裕福で、楽で、自由だったけどちっとも幸せなんかじゃなかったんだとその時やっと気付いた。



お父さんに私の話をもっと聞いてと媚びていたら、




一緒にどこかにドライブに出かけようと誘っていたら、




もっとお互いに寄り添える関係に修正することができていたなら、





今が違っていたのだろうか。




わからない。



だけどこれだけはわかる。私は責められる人間なんだ。



この先、誰にも許されないし、普通には生きていけない。




私にも責任がある。




憎まれる理由がある。




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