(完)嘘で溢れた恋に涙する
その後のことは本当に記憶がない。



その後どうしたのか、どうやって帰ったのか、覚えていない。



だけど、次に目を覚ました時、私は家の布団の上に寝かされていた。



開いた目いっぱいに広がったのは、しみやひびだらけの薄汚れた天井だった。



起き上がることもせずに、今までこの部屋には何人の人が住んできたんだろうとぼんやりと考えていた。



そのまままた2度目の深い眠りに落ちていたらしく、次はお母さんに揺すられて目を覚ました。



起きたばかりで鉛のように思い頭を抑えながら起き上がった私にお母さんは言った。




「由姫。おばあちゃんのところに行こうか」



じっとお母さんの顔を見つめながらふと気付いた。




どこのお母さんよりも綺麗で自慢だったお母さんはいつのまにかしみやしわが増えて、はりやつやがなくなっていた。



やつれたその顔はもうかつてのお母さんじゃなかった。





< 134 / 381 >

この作品をシェア

pagetop