(完)嘘で溢れた恋に涙する
そっちに視線を向けると、理玖がノートの切れ端をこっちに寄せてきた。



【放課後、校舎案内するよ!】



正直、断りたい。


いや断らなければいけない。


理玖は気づいてないのかもしれないけど、私は理玖から憎まれるべき存在なのだ。


陸玖のみならずクラスのみんなにも近づく気は無い。


私に他のみんなと同じように一緒に笑い合う権利はないから。



そうやってこれまでも過ごしてきた。



初めこそ興味は持たれるものの、時が経ち自分から関わることをしなければだいたい私に対する興味はなくなり影の薄い存在となれる。


でもだからといって、自分から嫌われると言うわけではない。


初めは当たり障りない対応をして、徐々に離れていけばいい。



だけど陸玖は別枠だ。



初めから関わるべきじゃなかった。



理玖に会った時から、頭の中で警鐘が鳴り響いているような感じ。


従わなかったら後でとんでもないことになりそうな気しかしない。



何も気づかれないで、あと半年、この中学校で静かに過ごしたい。


だから、


【ごめんなさい
実はまだ引っ越しの片付けとか終わってなくて早く帰らなきゃいけないから、また今度お願いしてもいいかな】


なるべく丁寧に文字を書いて、
一度見直してから理玖の机に置いた。


理玖はしばらくじっとそれを見て、それからまたさっきの切れ端のスペースに何か書き込んでいる。


どうか納得してくれますようにと、横目に祈る。


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