(完)嘘で溢れた恋に涙する
祈るように目を瞑っていると、待ちかねた凛花ちゃんの声が聞こえてはっと頭をあげる。



「由姫ちゃんが転校してきた日、言ったよね」



いつもの穏やかな口調とは違う、一音一句に力を込めたようなしっかりとした話し方だ。



でもなんの話かわからない。



「色々あってみんなから嫌われるようになったって。
実はね、ちゃんと原因があったの。
ある日私のお父さんがリストラされたの。
それでみんなに馬鹿にされるようになってそれがエスカレートしていった。
私辛かったけど、お父さんのことは絶対恨まなかった。
お父さんは何も悪いことしてないから。
でもみんなに無視されたり、嫌がらせをされたりするのはきつかった。
昔みたいに友達がほしかった。
だから由姫ちゃんが友達になってくれて、みんなとも元に戻れて本当に嬉しかった」



その言葉に私はほっと胸をなでおろした。



やっぱり凛花ちゃんは私のことを裏切ったりしない。



「でもね、お父さんが必死で仕事を探している姿を毎日見ると辛くて、耐えられなくて、だから絶対にお父さんは言おうとしなかったことを調べたの。

なんでお父さんはリストラされなきゃいけなかったのか。


誰に聞いても意味がないことはわかってたから、学校のパソコンで調べてみた。
みんなに手伝ってもらって、お父さんの会社のことを調べたの。
そしたらわかった。
ある大企業の社長がひき逃げ事件を起こして捕まったって。
私のお父さんが勤める会社はその企業の子会社みたいなものだった」


嘘でしょ。


全身の血の気がひくのを感じた。



違う、まさかそんなこと、あるわけない。



何か喋ろうとしてもうまく声が出てこない。



次の瞬間、凛花ちゃんの目は見たことないくらい鋭く尖り、絶叫した。



「由姫ちゃんは知ってるよね!?

あんたのお父さんが起こした事件のせいで営業が上手くいかなくなって、会社は買収された!!

じゃあこれは知ってる?
子会社は大規模なリストラをしたの!!
お父さんはあんたのお父さんのせいで仕事を失った!!!」


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