(完)嘘で溢れた恋に涙する
気づかずに何度もお母さんに呼びかけていたが、途中で自分の発したはずの声が聞こえていないことに気づいた。



おかしいと思いながらもそのまま口を動かし続けたが、ふいに手を置いた首の辺り、声帯が振動していなかった。



怖くて堪らなくなり、大声を出す勢いでお腹に力を入れて精一杯叫んでみた。



だけど、お母さんは気づくことなく眠り続けていた。



これはまずいと子供心に感じ取り、お母さんの肩を叩いて起こそうと思って、ベッドから降りた。



しかし、足を床におろし立ち上がった瞬間、突如鈍器で頭を殴られたような鈍い痛みを感じて思わず座り込んだ。



その時まで思い出せなかった教室での出来事が次から次へと無理やり頭に押し込められたように戻ってきた。



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