(完)嘘で溢れた恋に涙する

出会い

夏の終わりを告げる蝉の声がうるさく鳴り響く。
耳を塞ぎたくなるほどの大音量で聞こえるのは窓が全開なせいだ。


いつもなら冷房がついているらしいけど、故障中らしい。


代わりに扇風機が回っているけど、外と気温は全く変わりない。


おかげで私の買ったばかりの制服はすでに汗でべっとりと肌に張り付いていて気持ち悪い。



軽快な音を鳴らして緑色の黒板にチョークで書かれていく文字と、その前に立つ私を交互に見る私の新しいクラスメイトたち。



彼らはみんな揃ってこんがりと焼けた肌をしていて、
好奇心むき出しで輝く目からは私に興味を持っていることがわかる。



だからといって私もだれかを見つめるわけにはいかず、床に視線をおとしてぼんやりしていた。



「よし！」



黒板に私の名前を書いていた先生が急に声を上げてはっと視線を上げる。


横目に黒板を見ると、角ばった字で私の名前が書いてある。



「えっと、こちら坂井由姫さん。広島から転校してきたそうです」



担任の女の先生がはきはきとした声で私のことを紹介し始めた。