(完)嘘で溢れた恋に涙する
死ぬことは怖くない。



だけど、私はこの私を抱きしめる細い手をすり抜けられない。



この号泣するお母さんを1人置いて死ぬことはできない。



例え、万が一私が死んだとしても、お母さんは私の後を追って死ぬことはできないと思う。



お母さんはここまで人生が堕ちてもお父さんをきっと愛してるから。



周りに誰もいなくなったお父さんを1人残して死ぬことはできないはずだから。



私としては父親とも思いたくない、血縁関係も否定したいお父さんだし、客観的な目で見たとしてもろくでもないクソ男だけど、それでもお母さんは夫婦として長年を連れ添ってきたあの男を見捨てられないから。



だから、1人で中傷も批判も受け、ストレスでどうにかなっても生きていくだろう。



そんなお母さんを想像すると、死にたくても死ねないのだ。



私の力なんてたかが知れているけど、それでもこの体でお母さんに降りかかる悪意を代わりに受け止めたい。



支えたい。



だから私はもう泣かないし、笑わないし、できるだけ孤独を徹するし、誰かに愛してもらわないなんて思わない。



もう二度と自分の立場をわきまえないような行動はしない。



そうやって罪を償うためにこの先の人生全てをかけてみせる。



毎日彼等を思い謝罪の思いを唱えて、必ず自分の罪から逃げようしたり忘れたりしない。



誰にも幸せだと思われない人生を誠心誠意をもって生きていく。



だからどうかお母さんと共に生きさせてください。



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