(完)嘘で溢れた恋に涙する
ごめんなさい、陸玖。



私は身の程もわきまえず貴方に恋をしていた。



貴方は私を騙すために出会った時、一目惚れをしたと言ったよね。



あれは嘘だったよね。



でも私はあの時、本当に一目惚れをしたんだ。



久し振りに何の悪意もない優しい言葉をかけてくれて、太陽みたいな笑顔を向けてくれた貴方に私は一目惚れをしてしまった。



貴方が私の正体に気づいて、私も貴方の正体に気付くまでの数秒間で私は生まれて初めて恋においてしまった。



泣きそうなくらい嬉しかったの。



聖奈ちゃんからこっぴどく文句を言われている私を、それが日常だった私を、優しい言葉で助けてくれた。



それだけで恋に落ちるには十分だったの。



だけど、貴方が私のことを殺したいほど憎んでいることを私は知っている。



だから言いたくもない言葉をいくつも投げかけて私のことを同情の余地もない極悪人に思い込ませた。




優しい貴方が私のことを心から憎めるように。



貴方を好きだからこそ、冷たい嘘をいくつも重ねた。



貴方が望むなら、私は死すら受け入れる。



今の私の中で一番大きな存在はどうしたって陸玖だから。



ごめんなさい、陸玖。



私は卑怯で、愚かで、矛盾ばかりの汚い大罪人です。



それでも私は貴方を世界で一番愛しています。



だけど、きっとこの愛は世界で一番汚い愛だね。



私たちは出会うべきじゃなかった、もちろんそれは痛いほどわかってる。



だけど私は出会えてよかったなんて、この期に及んで思っているんだよ。




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