(完)嘘で溢れた恋に涙する
「どうせ、半年後にはここを出て、本土に行かんといけんとよ」



美結は背伸びをしながら、海の向こうに視線を送った。



私もつられて柵に手をかけ小さく見える本土を眺める。




そう、この島には中学校までしかないから、中学を卒業して進学する者はここを出ていかなければいかない。



通うこともどうにかできるけど、朝も早く、部活や寄り道もできないので、大半が高校の近くの寮や下宿で暮らすらしい。



私は本当は進学しないつもりだった。



少しでも早く働いてお母さんを支えたかった。



だけどお母さんは絶対に高校には行きなさいと言って譲らなかった。



お金は何とかするからと涙ながらに訴えられたら、さすがに断ることはできなかった。



私はそれなりに成績はいい方だから、これから必死で勉強して特別招待枠のある学校に行けたらいいと思っている。



「…でも正直本土に行くのは怖い」



ついそんな本音が口から漏れる。



「確かにねえ、うちも本土に行くとお姉ちゃんのこと思い出しそうだし、怖いかも」



柵にもたれかかりながら、しみじみとそう話す美結。



「でも怖がってちゃ前進めんし、今度は2人だからきっと大丈夫」



「…そうだね」



その言葉に強く励まされる。



生きていこう。



これからも罪を忘れることはできないし、勿論、忘れちゃいけない。



それでもきっと後ろ向きに生きるよりは前向きに生きていく方が幾分マシだ。



そして、私にできることが何か考えよう。



自分の弱さを見つめることができた。

自分の罪を認めることができた。

償いとはなにか必死に考えることができた。

見守っていてくれる人がいることを知れた。

自分を必要としてもらうことの素晴らしさを知れた。


自分が愛されていたことを知れた。



人を愛することを知った。





だから私はまだまだ強くなれる。



明日も明後日も生きていける。



そしてたくさんの人にこれまで助けてもらったように、今度は私が誰かを救いたい。



そうだ、これからも生きていきたい。



今、初めて心の底からそう思える。



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