(完)嘘で溢れた恋に涙する
美結が帰ってからこれからのことを考えた。



今まで4日間も頭を悩ませても考えがまとまることは一切なかったのに、今は気持ち悪いくらい頭が冴え渡っていた。



そして1つの決断をした。



夕飯が近くなって、お母さんが仕事から帰ってきた。



私が座敷にいるのを見つけて、部屋に顔を出して大丈夫かと声をかけられた。



そう言われて私は自分が風邪をひいていたことを思い出した。



「うん、もう平気。おかえりなさい」



そう言うと、お母さんは安心したように笑った。



そこで私は正座に座り直して、お母さんの目を見て言った。



「お母さん、ちょっと話があるの」



こんな風に力強く喋ったのは久しぶりで自分でも違和感があるし、きっとお母さんは驚いているだろう。



お母さんはそっと襖を開けて、部屋に入って私の前に座った。



おばさんに見つかる前に手っ取り早く済ませようと思っているんだろう。



お母さんはまだおばさんの本当の姿を知らないから。



「お母さん、私夢ができたの。
まだ具体的ではないけど、いつか私と同じように家族が犯罪を犯して苦しんでいる人たちを救いたい。
だから私、高校や大学に行ってこれからも色んなことを学びたい。

だから…あと少しだけ私を助けてください。
お母さんにこれまでずっと苦労をかけてきて、きっとこれからもかけると思う。
でもその分絶対幸せにする。
だからお願いします」


そう言って頭を下げて、額を畳にすり寄せた。


しばらくして頭を少し上げてお母さんを見ると、お母さんは静かに涙を流していた。


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