(完)嘘で溢れた恋に涙する
あれから約一年が経った。



あの日から私は猛勉強をし、なんとか本土の私立高校の奨学生枠を得て、高校に合格することが出来た。



入学金免除と授業代が他の生徒より安いという特典の代わりに特進科のクラスで毎日息をつく暇もないほどの早い授業とたくさんの課題に追われている。



美結も同じ高校だけど、普通科だから同じクラスではない。



でも下宿先は一緒だ。



放課後、帰る支度をしていると廊下から大きな声で呼ばれた。



「由姫!バイバイ!」



美結だ。



満面の笑みで、手をブンブン振っている。



美結は部活に所属していて、体育館はこの先にあるからいつもここを通る時声をかけてくる。



手を振り返すと、満足したように廊下を駆け抜けていった。



美結は初め部活には入らないと言っていた。



根が馬鹿な私はその言葉を鵜呑みにしていたが、しばらくして美結が本当は部活に入りたいと思っていたことに気づいた。



いや、いつも帰る時、グラウンドや体育館を興味深そうに覗き込んでいてさすがに私でも気づかないはずがなかった。



美結は絶対に言おうとはしなかったけど、おそらく、私が帰り道1人だと危ない目にあうかもしれないことを危惧してくれていたようだ。



まだこの学校では私が犯罪者の娘だとは気づかれていないみたいだけど、いつどこで知られるかわからない。



それを心配してくれていたんだろう。



私は初めて美結に対して強く言った。



私のために自分を犠牲にしないでほしいと。



そんなのは支え合いとは言えないと。



初めは渋っていたが、何度も説得を続け、みんなより少し遅れて美結は部活に入った。



入った部活はバドミントン部だった。



きっと私も一緒にその部活に入れば美結もすぐに納得したんだろうけど、人一倍体力がなく、運動神経皆無の私が入部したところで迷惑にしかならないし、



マネージャーならできるかもとも思ったけど、既にその枠は埋まっていて、私は現在、9月に至るまで帰宅部生を貫いている。


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