(完)嘘で溢れた恋に涙する
美結は透のことが嫌いだ。


本人の口から聞かなくったって、多少鈍感だって、美結の透に対する態度を見ればすぐにわかる。


まあ、美結が異様に嫌うのも、透を見てれば納得がいく。


透がさっき言ってたように、彼は一応帰宅部ではなく、サッカー部に所属している。


しかし、このサッカー部というのが弱小も弱小、ギリギリ試合ができる人数しかいないし、練習も一週間に2回あればいい方だ。


サッカー人気の現代で、私立なのにここまでサッカー部に力を入れていないのはうちの学校くらいじゃないだろうか。


だけど、それでも部員たちにやる気があるなら全然いい。


青春ドラマのように、何が起こるかわからないところがあって面白いだろう。


だけどそんな希望持つことなんて絶対できないくらい部員達にはほんの少しの熱量もない。


努力なんて言葉には縁もないような人たちばかりだ。


練習は体がなまってちょっと動きたいななんて思った部員たちが好きに集まって好きなだけ遊ぶものだと聞く。


サッカー部なんて名ばかりで、楽しそうにキャッチボールだけして帰っていく日もザラらしい。


それでも自分たちだけでそれを楽しむのならまだいい。


部員たちはほかの強豪の部活の厳しい練習を見ては馬鹿にするというタチの悪い連中だ。


そして、透はそのタチの悪いサッカー部のエースだ。


もちろん悪い意味でのエースだ。


何事も全力にがモットーの美結にとって、その部活は悪の巣のようなものにしか思えないだろうし、それを率いる透は悪の権化そのものでしかないだろう。


嫌うのも無理はない。


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