(完)嘘で溢れた恋に涙する
しかも、透も感が鋭いから、美結に嫌われていることなどとっくに気づいているはずなのに、気にするどころか面白がるように美結が嫌がるようなやり方ではなしかける。


もしかしたら、彼はマゾヒズムなのかもしれないと思ったことも何度かある。


今も、すでに空気がピリッとゆがみつつある。


が、すでに2人の扱いに慣れてしまった泰斗さんが本格的に険悪な空気になる前に話題を変えることで、空気を変えようとする。


「美結ちゃんは新人戦いつなの?」


「うちは2週間後の土日です」


「あ、俺も一緒。残念だな、見に行きたかった」


「私もだよ~。あ、美紅サン見に来てよ」


「え、やだよ。休みの日に外に出たくない」


「いいじゃないすか!俺の試合も見に来てくださいよ!」



空気が穏やかになりほっとしたのも束の間、美紅さん、泰斗さん、里奈さんの年長組が盛り上がってしまって、私と美結、透、倫太郎くんの1年生組は取り残されてしまった。

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