(完)嘘で溢れた恋に涙する
がくっと崩れ落ちそうになりながらも、何とか美結の考えを変えようとする。


「美結!私は1人で平気だって」


そう言うと、美結は顔を近づけてきて私にしか聞こえないようなか細い声で言った。


「新人戦は県内全部から高校生が来るとよ?高校生だけやないその応援でいろんな人が来る。もしかしたら、由姫のこと知っている人がおるかもしれん。なんかあったらどうすると」


そんなことない、とは言い切れない。


あの事故から約4年が経ったとはいえ、ネットで調べれば未だにその話題はか細くも続いている、どこに私のことを知っている人がいるかなんて神様でもない限り誰も知らない。


試合会場にいても、そしてその人がとても攻撃的でも文句は言えない。


それに、何より美結は私のことを何より心配してくれているのだ。


部活に入部するか、しないか決める時もそうだったように、いつだって美結は自分のことより私のことを考えて行動してくれている。


そこまでしなくてもいいのにと思うくらいに。


そんな美結だから、もしも私が試合を応援しに行って危ない目にでもあったら、間違いなく自分を責めるだろう。


どれだけ私が否定しても、ずっと気にして、部活もやめてしまうかもしれない。


それなら、やっぱり美結の言うように、不服だが透に一緒に来てもらうのが一番かもしれない。


もう一度美結の真剣な表情を確認してから、私はうなずいた。



「わかった。透と一緒に行く」


美結は満足そうに笑って、透は了承した私に驚いたのか、いつもの飄々とした表情ではなく、単純に驚いた顔をしていた。



話が丸くまとまったくらいにはもうみんなご飯を食べ終えていて、手を合わせごちそうさまを揃えて言って、夕食の時間を終えた。



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