(完)嘘で溢れた恋に涙する
次の日の朝、いつも通りの時間に起きて、顔を洗いに廊下に出るとリュックをからって階段を降りようとしている美結が見えた。


もしかして寝坊したのかと焦って美結を呼ぶと、美結は階段を数段降りたところからひょこっと顔だけ出して口早に言った。



「由姫!ごめん、昨日言い忘れとった!今日から部活の朝練で試合終わるまで先に行くけん!」


寝起きでぼーっとしていたが、自分が寝坊したわけではないということだけは理解して、安心して手を振って送り出した。


確かバドミントン部は試合前とかにかかわらず、昼練と放課後の練習は必ずあっている。


それに加えて朝練は、想像するだけでぞっとする。


それから身支度をいつも通りに終えて、朝食の席に着いた。


美結と同じように里奈さんと泰斗さんも朝練でおらず、いつも話を振ってくれる3人がいないし、透も朝がすこぶる弱いらしく、いつも朝食の時間は全く喋らないから朝からお通夜状態だった。


別に苦痛でもなく、こんがりと焼かれたトーストをもそもそと食べていた。


そんな状態で朝食を終えると、だんだん平常のテンションを取り戻し始めている透が歯を磨きながら私に話しかけてきた。


「あ、由姫ちゃん。今日一緒に学校行こうよ」


よくもまあ、歯を磨きながらこんなにはっきりと喋れるな、なんてことはどうでもよくて。


「いや、結構です」


私は髪を櫛でとかしながら、間髪入れずにお断りした。


「いいじゃん。今日は美結ちゃんもいないんだからさ。たまには、ね?」


ね?じゃないよ。


こう見えても私は昨日から少しだけこの人に怒っているのだ。


「昨日も言いたかったけど、美結のこといいように利用するのはやめて」



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