(完)嘘で溢れた恋に涙する
こころ
美結の大会の3日前。


授業が全て終わり、いつも通り帰る支度をしていると透が急に私の教室に飛び込んできた。



教室に残っていた女子生徒の熱のこもった視線を全て集めながら私の席にやってきて言った。



「なあ、由姫ちゃん。今日一緒にマルポート行こうよ」



マルポートは近くのショッピングモール。



生活雑貨に、洋服類、本屋、ゲームセンターと大抵のものは揃っていて、どの年齢層の人からも利用されている施設だ。



私は人混みが苦手だからあまり行ったことはないけれど。



「は…なんで」



学校では近づくなと言って約束条件まで飲んだのに全て忘れたように周りの目も気にせず能天気に笑う透が憎らしくて思わず口調が厳しくなってしまう。



「美結ちゃんの大会の差し入れ買いに行こうよ」



透はさらっとそう言った。



しかし、私はその言葉に絶望していた。



そうか、試合を応援しにいくのに差し入れを持っていくのは当たり前じゃないか。



なのに私は今までも何度か試合を見に行ったことがあるけど一度もそんなの持っていたことがない。



頭になかった。



なんて奴だ。親友失格、いやそれどころか人間失格。



不甲斐なさと情けなさで今すぐに美結に土下座して謝りたい気分だった。



美結はそんなの全く気にしてないよと豪快に笑うんだろうけど。



「…わかった。今から行くの?」



「お、初めて乗り気じゃん」



物珍しそうに見られるが、気にしない。



別に透がいようといまいと関係ない、美結のためだけだ。



ここで名誉挽回しよう。



美結が喜ぶもの、試合に全力で挑めるものを持って行こう。



大好きな美結の親友として、少しでもマシな人間になれるように。


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