(完)嘘で溢れた恋に涙する
「私、4年前に起きた親子ひき逃げ事件の犯人の娘なの」


たくさんの人が行き交うショッピングモールの通路で話す内容じゃなかった。


だけど、今言わなければまた私は逃げてしまう。


「は?」


そりゃあ付いてこれないだろう。


この暴露に素直に追いつける人がいたら、それはもう天才というか、変人だ。


「私は、親子2人をひき逃げで殺した男の娘なの」


もう一度丁寧に、内容がわかるように言い直すと、透は思いのほか驚いた顔というより、感情の読み取れない真顔になった。


「とりあえずどこかに座ろう」


そう言われて、私は透にエスカレーター下の薄暗くて全く人が寄り付かない、ベンチへと連れて行かれた。


そこで、私はこれまでの経緯を全て話した。


自分の口からあの話を全て話すのは初めてで、何度も詰まりそうになったり、泣きそうになりながらも必死に伝えた。


決して自分を庇ったりするような話し方はしたくなかった。


話している間、透は一切口を挟まず、相槌を打ちながら私の話に聞き入ってくれた。


そして、最後に私が今も陸玖に恋心を抱いていることを伝え、10分ほどでなにもかも話し終わったが、私は怖くて隣にいる透の顔を見れなかった。


透もしばらく無言を徹してた。


この状況でそれは当たり前だろう。


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