(完)嘘で溢れた恋に涙する
でも例え罵倒されたって、あっけらかんとお前最低だななんて言われても構わない。


私は自分の口からちゃんと伝えたいことを伝えたい人に言えたんだから。


あの時も、陸玖にこうしてればよかった。


自分はあなたの大切なものを奪った男の娘だって伝えることができていればその時は辛かったかもしれないけど、今こんなに泣きたいくらい毎日想ってしまうことはなかったはず。


なにもかも私の弱さのせいだ。


しばらく無言の時間が続いていたが、隣で透が深く息を吐き、無意識に肩を強張らせた。


そして透が手を上げて、何をするかと思ったら私の頭にその手を置いた。


そして、髪がぐしゃぐしゃになるくらい頭を撫でた。


予想外の行動に動転したが、それでも彼の顔を見ることはできなかった。



「大変だったんだな」



透が言ったのはただその一言だけ。


でも私は目が潤んで涙をこらえるのに必死になるくらい嬉しかった。


初めて伝えたその言葉を受け入れてもらえたんだと。


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