(完)嘘で溢れた恋に涙する
美結は反対サイドの観覧席まで俺を引っ張っていき、そこで乱暴に手を離した。


「なんばしよると。あんなに由姫のことば追い詰めてから楽しかと?」


軽蔑の目で俺を睨みながら、そう言う美結に俺は何も言い返せなかった。


頭を冷やしてみると、さすがにやりすぎたかもしれないという思いが胸に渦巻きはじめた。


美結は重くため息をついて、そばにあった席に腰を下ろしてその隣に座るよう促してきた。


「確かにやりすぎた」


怒りに任せて、自分をコントロールできずに汚いやり方で由姫の日常を壊してしまったかもしれない。


確かに由姫のことは殺してやりたいほど憎いけど、あれは褒められた行動じゃない。


数分前の自分を情けなく感じて、頭を抱えて席に座った。


「なんでここに?」


「友達の応援」


「そう」


美結は短く返事をして、唇を噛んで悔しそうな顔をした。


美結のことだから、自分の応援のせいで俺たちを再会させてしまったなどという風に自分を責めているのかもしれない。


試合が残っているであろう美結にそんな思いを抱かせてしまったことが申し訳なくて目を見れない。



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