(完)嘘で溢れた恋に涙する
転機が訪れたのは、あの夏の終わりだった。


転校生は10年に1回くらいが普通だというこの島にまた転校生が来た。


名前は坂井由姫。


紹介された時はさほど興味を持ちはしなかった。


だけど、近づいてその顔を見て激しく驚いた。


こんなことがあるのかと衝動的に誰かに話したくなるほど衝撃的な出来事だった。


真っ白な肌にくっきりとした顔立ち、何よりも目立つ赤い唇は間違いなくあの少女だった。


俺の家族を轢き殺した男の娘だった。


俺が見た写真の得意げな表情とは全く違って、力のない今にも消えそうな顔つきだったため戸惑いはしたが、その少女の現れは俺がそれからを生きる糧となった。


あの日の恨み、悔しさ、憤怒、全てが再燃したのだ。


その少女の登場は俺の心の中でマッチとなった。


死んでいた俺の心が奇跡的にもう一度明かりを灯したのだ。


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