(完)嘘で溢れた恋に涙する
そして、心に誓った。


目の前にいるかの少女を絶対に許さない。


俺と同じように傷ついた顔をするこいつを今まで以上に傷つけてやる。


まるで鏡を見ているかのように俺と同じ表情、顔つきのこいつに俺ができる限りの復讐をしてやる。


俺は決意した。


十分に辛い目に遭ってきただろうこの少女を今まで体験したことのない地獄を味あわせるためには努力しなければならない。


今ここでこいつの正体を言ったところでこいつは大して傷つかないだろうから。


それなら俺は精一杯笑いかけてやる。
優しくしてやる。
好きになってやる。


こいつが望むことならなんでもしてやる。


こいつの周りを明るく照らしてやる。


そしてその後絶望の淵に突き落としてやる。


それが俺の復讐だ。


もしもそれが成功すれば俺はきっとまた本気で笑えるようになる気がするんだ。


元に戻れる気がするんだ。


海央が言い残した言葉を叶えられる気がするんだ。


母さん、海央、見ててくれよ。


俺がその無念を晴らしてやる。


天にそう誓い、俺はあいつに笑いかけた。


そしてもうすでに俺が俺であることに気づいているだろう坂井由姫に向かって言った。


「いや、俺本気で一目惚れしてしまったかもしんない」


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