(完)嘘で溢れた恋に涙する
月曜日
月曜日


あのバドミントンの新人戦の日から2週間


サッカーの新人戦で無事県大会で優勝を飾り、祝日だった今日が1日休養となり、久しぶりに島へ足を運ぶこととした。


船に乗っている間、どこまでも続く青を見つめていた。


初めてレギュラーに選ばれた大会で必死になってボールを追いかけている間は何も考えずに済んだが、手持無沙汰の今、思い出されるのはあの日美結からかけられた言葉ばかりだった。


「自分を大切にしなよ」って。


それだけ呟いて美結は俺の前から立ち去った。


その言葉が何を言いたいのかはよくわかっているつもりだ。


平たく言えば自分に正直になれということだろう。


誰かに俺のことを知ったように話されるのは嫌いだけど、美結の言葉だけは素直に受け止められる。


美結は俺と同じ人間だから。


美結がいつも明るく振る舞っていた俺に憧れていたと言ってくれたが、俺もそうだった。


俺もあの見苦しいほどに笑顔を絶やさない美結のことを素直にすごいなと考えていた。


お互いにお互いを自分とは全く違う人間だと思ってきたが、本当は似た者同士だった。


つらい過去を遠ざけるように明るい自分を偽り続けてきた。


俺たちはいつも同じ方向を向いていた。


だから今や目指す方向に大きく前進し、俺を遠く後ろに置き去りにしていってしまった美結の言葉は俺の心に強く響く。


だけど、そんな美結の言葉だとしても無理なんだ。


由姫のことが好きだ、忘れられない、だから告白する。


普通の人から見たら単純なことに見えるそれが俺のとっては難しいんだ。


それに、あれだけ由姫の心を踏みにじってきた俺が由姫の心を手に入れたいなんて最低すぎる。


それに、被害者家族の俺が、加害者家族の彼女を好きになるなんて、そんな子供騙しの少女漫画みたいな非現実的なことありえない。


許されない。


俺たちは変われない。



一生ここから動けない。



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