(完)嘘で溢れた恋に涙する
部屋に入って襖を閉じた。


私とお母さんが自由に使えるのはこの畳の小さな部屋だけだ。


京子おばさんはお母さんの遠い遠い親戚らしい。


犯罪者の家族である私とお母さんは事件後、何度か引っ越しをした。


今度こそは平和に暮らせるはず。


初めはそう期待を抱いていた。


だけど、誰でもインターネットをもつこのご時世、簡単に世の中が私たちを忘れてくれるはずなかった。


どこにいっても、インターネットの中の住人は私たちを見つけ出し、公開処刑にする。


どこにいってももう無駄なんだ。


私は一生この罪を背負い続けていかないといけない。


そう諦めがついた時だった。


お母さんのお母さん、つまり私のおばあちゃんがある提案を持ちかけてきた。


何でも、遠い親戚に島で1人暮らしをする女性がいるらしく、


その人は高齢のせいで足が思うように動かなくなって手伝いを欲しがっているそうだと。


だから、その人の家に住まわせてもらったらどうかと。



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