(完)嘘で溢れた恋に涙する
お母さんは初めは渋っていた。


今までの経験のせいで、新しい地が不安になっていたのだ。


それでも結局、お母さんはその提案を受け入れた。


すべて私のためだ。


私の置かれる状況をほんの少しでもよくするためだ。


そして私はお母さんについてこの島にやってきた。


京子おばさんは私たちがここに来たことを嫌がっている。


全身で拒否しているのがわかる。


そりゃあそうだ。


おばさんは自分の身の回りのお世話をしてくれる、"ごく普通の人"を求めていただけだ。


一族の不名誉とでも言える、私たちみたいな遠い親戚なんか求めてない。


押し掛けるようにしてやってきた私たちを疎む気持ちもよくわかる。


ただでさえ、遠い親戚が死亡事故を起こしただなんて迷惑でしかないだろうに。
家に乗り込まれて、私だったらなんて迷惑なやつと思うだろう。


だけど、私とお母さんは迷惑をかけているという自覚をもちろん持って、それでも傍迷惑にここにしがみついていくしかないんだ。


もう他に私たちを受け入れてくれる場所はどこにもない。


自分たちの力だけではもうどこでも生きていけない。


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