(完)嘘で溢れた恋に涙する
私を敵として睨む姿は、あの最後に言葉を交わした雨の日と一緒だった。


とことん私は雨の日についてないと強く自覚したものだ。


次々に投げられる言葉は私の肩に強くのしかかった。


私が私の思うように生きたくても、未来予想図を描いても、陸玖がそれを嫌がるのなら私はあきらめなくちゃいけない。


だって


「だって私はどうしたって加害者家族だから」


悲しいくらいにその真実はどしっと構えて動いてはくれないのだ。


それはなかったことになんて一生ならないのだ。


気づけば、透は悲しそうに目を伏せていて、その手は力をなくして私の手は解放された。


「でも透が頑張っているところ見たら元気もらえるから。頑張ってよ」


そう言うと、透は力なく笑った。


「一か月後くらいには練習試合して絶対勝てるくらいに強くなるから、応援しててよ」


「期待してるよ」


そう言うと、透はランニングの列に走って戻り、その先頭で掛け声をかけ始めた。


しばらくその様子を見つめてから、そこから立ち去った。



正門を出ると、あまり人通りが少なく代わりに見たことのないガラの悪い連中がたまっていた。


絡まれないようにと顔をそむけながら早足でその場を後にしようとしたが、間に合わなかった。


「ねえ、君、坂井由姫ちゃんだよね?」


背後からかけられた言葉を必死で無視して、歩く速度を速めたが心臓の鼓動も同時に早くなっていた。


なんで、この人たち私の名前知ってるの。


まさか私の正体を知ってる?


恐れていた事態が起きているということは理解した。


だけど


どうしよう、学校に戻る?とにかく人通りがあるところまで逃げる?


予想していなかった事態に動揺していることも自覚している。


だけどその悩む時間も無駄だった。


そもそもこんな5,6人のガタイのいい男に囲まれて逃げられるわけがなかったんだから。


予想通り、連中は追いかけてきて私をぐるっと囲った。


目の前に立つ金髪の男がくちゃくちゃとガムを噛みながら、愉快そうに私を見て笑った。


「君、犯罪者の娘なんだってねえ」


「は?意味がわからないです。人違いじゃないですか?」


もはや私にできるのはしらばっくれるということだけだった。


だけどそんなのが効くわけがないというのは心のどこかで分かっていた。


この人たちはそれなりに自信がない限り、こんなリスクのあることしないはず。


何か根拠となる証拠を持っているのだ。



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