(完)嘘で溢れた恋に涙する
「しらばっくれないでよ~。俺たちはネットでしっかり証拠つかんできたんだから」


思った通り、男が私の前でひらひらと掲げたのはどこかの掲示板にアップされていた私とお父さんとお母さんが写る昔の家族写真のコピーだった。


「ほら、これ君でしょ?
いやあ俺の知り合いがこの前バドミントンの大会で君がなんか男の子一方的に責められているのを見たらしくて、君があんまり可愛いもんだからついつい調べちゃったんだって。
そしたらまさかのその美少女が犯罪者の娘だったって俺に教えてくれてさあ」


私を嘗め回すように見ながらそう言って、恐ろしいくらいに低い声で私の耳元でささやいた。


「ねえ、君のお父さん人2人も殺してんだからさ、俺らがちょーっと君のこといじめても悪くないよね?」


何も言えずに押し黙っていた。


そんなわけないじゃない、なんて言えない。


彼と同じような考えの人はたくさんいるだろう。


ただ本当に行動に移すのはほんの一握りだけだというだけだ。


いつこんな状況におかれてもおかしくなかった。


何もできない。


私は無力だ。


「君の下宿先も、実家も知ってる。ついてきてくれるよね」


逆らえるはずがない。



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