(完)嘘で溢れた恋に涙する
「別にそんなこと」


否定しようとしたが、妨げられる。


「あるだろ。最近寝れてないだろ。前より食べる量も減ってるし。しょっちゅう部屋に閉じこもって勉強してるし、、パーッと遊びにいこうぜ~」


気持ち悪いくらいよく見られている。


透の言う通り、私は確かに気を張りすぎていたのかもしれない。


いや気を張っていた。


仕方ないだろう。


あんなにたくさんのことが一日のうちに起きたんだから。


次の日の朝目覚めたとき、あれは夢だったのかなと考えたほどだ。


そんな私に透は休むことなくしゃべりかけてくる。


「全部忘れて遊んだら、スッキリするって」


あともう一押しだと言わんばかりに優しげな口調でそう語りかけてくる透に少し腹も立つが、一応私のことを心配してくれているんだろう。


まだ明日もあるんだから、今日絶対課題を済ませなきゃいけないわけでもないし。


仕方ない透におとなしく従っとくか。


そんな私の表情を読み取ったのか、透がニヤッと笑う。


渋々そう決めたところで、よく考えればいつも結局こんな感じで透のいいようにされているなとため息をつく。


透は支度が終わるまで下で待ってると言ってドアを閉めようとしたが、それを断って透を引き留めた。


普通ならこういう状況になったら年頃の女子はせっせと髪や服をたくさんの時間をかけて仕上げるんだろうけど、


私は特にお洒落する理由もないし、そもそもお洒落できるほどの服も持ち合わせていないし、髪も櫛で一度とけば完成なので、そのまま財布だけ持って部屋を出る。


Tシャツに長ズボンにパーカーの地味な恰好だ。


いつでも動ける。


そうやって出てきた私を透はじっと見てかすかにため息をこぼした。


「もうちょーっとお洒落してくれても」


「うるさいなあ、そもそもあんま服持ってないんだもん」


口をとがらせて言い返すけど、透の不満そうな顔は治らなかった。


「じゃあいいよ、もういかない」


思わずムキになってそう言って踵を返すと、透は慌てたように私の手をつかむ。


「ごめんって。そんなダサい格好でも由姫は可愛いよ」


別にそんなの求めてないし、そもそもダサいって言わなくったっていいだろという悪態たちが喉元まで上がってきていたがぐっとこらえた。


こんなことで怒るのも、まるで子供みたいだ。


もういいと言って透の背中を押し出して、階段を降りた。



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