(完)嘘で溢れた恋に涙する
「本当にそれでいいの?」


美結と同じ事を聞く透になんとか笑顔を見せて頷いた。


「いいの」


「じゃあやっぱ俺と付き合いなよ」


突拍子も無い透の言葉に声も出ない。


「、な」


「だって付き合わないなら早く諦めた方がいいだろ。
俺と付き合えばすぐに忘れさせてやるよ」


まあ、言っていることはあながち間違いではないけど。


「いや、まずね、私は誰とも付き合う気はないっていうか」


「そんなの無理だって。
お前はこの先1人じゃ絶対ダメになる」


なぜそんなに言い切れるんだ。


たぶんも、かももない確信に満ちた言い方に思わずムッとする。


「1人で平気だし」


「いーや、お前は俺が必要だ」


「ふざけたこと言ってないで、ほらもう帰るよ」


話にならないと、ため息をついてすでに食べ終えたハンバーガーの包み紙とジュースの紙コップを持ち席を立った。


透も同じようにして私に駆け寄ってきた。


透はまだ何か言いたそうだったけど、早歩きでそれを無視した。


これ以上聞きたくなかった。


もしそんな透の言葉に甘えてしまったら、私は私を一生軽蔑しなくちゃならない。


外に出ると、すでに日は落ちていて辺りは真っ暗だった。


秋が近づき、もう夜は肌寒さを感じる時期になってきた。


ベストが寒さから身を温めてくれて、透の服選びのセンスに敬服する。


バスを待っている間、周りに人はおらずいるのは私たちだけだった。


「なあ由姫。こっち見て」


ずっと目を合わせようとしていないのに気づいたのか、ベンチに座って隣から話しかけてくる。


「何?」


断るのも妙なのでぶっきらぼうにちらっとその瞳を見ると、その瞳は戸惑うくらいに静かだった。


「俺は本気だから。
本気でお前が好きだし、お前を幸せにしたいと思ってる」


その真剣な眼差しから目をそらすことはできなかった。


「…でも」


「もう世間体とか、事件のことは一旦考えないで、由姫は少しでも俺といたいと思ってたりしないの?」


答えきれなかった。


思っていないとはっきり答えればいいのに、その一言が言えなかった。


唇をぎゅっと噛み締め、目を伏せる。


そこでタイミングよくバスが到着して、一旦話を切ってバスに乗り込んだ。


透は真剣だ。


本気で私のことを思ってくれてる。


< 367 / 381 >

この作品をシェア

pagetop