(完)嘘で溢れた恋に涙する
「ごめん、急に来て。
練習が早く終わるの今日くらいしかなくて」


行ってしまった透の方を見ながら、陸玖が申し訳なさそうにそう謝った。


この時間でまだ早い方なんだ。


単純に驚きながら、首を振って応える。



「大丈夫だよ。そこに公園あるからそこに行こう」


さすがに誰がいつ帰ってくるかわからないこの場所で男子と2人きりで会話する気にはなれず、少し先にある小さな公園を指差した。


陸玖は頷き、そこに移動した。


古ぼけたベンチが1つあって、そこに2人で隣り合って腰掛けた。


「その服似合ってる」


ベンチに座った瞬間、陸玖が目を細めながら私の服を見てそう言ってくれた。


「ありがと。こういうちゃんとした服久し振りに着たから私は変な気持ちなんだけどね」


透から買ってもらったのは伏せようと、当たり障りのない返事をしたのに、陸玖は遠慮がちに聞いてきた。


「さっきの奴から買ってもらったのか?」


エスパーですか。


思わずそう突っ込みたくなった。


なんでわざわざ空気が悪くなりそうなことを聞いてくるんだろう。


だけど嘘をつくわけにもいかず、黙って頷くと、陸玖は少し頬を膨らませた。


「ふーん」


「な、なに」


「さっきの奴、由姫のこと好きなんだろ?」


「は?い、いやそんなわけ」


「いいよ、嘘つかなくて」


なんとも言えず黙りこむ。


すると陸玖はおもむろに自分の髪をぐしゃぐしゃと掴んでため息をついた。


「ごめん、ただ悔しかっただけ。
あいつとは仲良いの?」


「…うん、それなりに」


「どんな話すんの?」


「どんな話って…普通の、しょうもない世間話だよ」


「へー、じゃあ俺ともそういう話してよ」



「へ?」



意図が掴めず、首を傾げる。


「俺ともしょうもない話してよ」




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