(完)嘘で溢れた恋に涙する
こんなこと私が文句を言う権利はない。


よもや陸玖に、こんな感情的になってぶつけるだなんて、論外だ。


陸玖は怒り狂っていい。


お前がそれを言うなと怒鳴りつけていい。


なのに、陸玖は黙ってそんな私を抱きしめてくれた。


安心させるように、赤ちゃんをあやすように、


背中を優しくさすってくれた。


私はあろうことかそんな優しさに甘えて、体を預けてしまった。


泣き続ける私を見捨てることなく、最後まで側にいてくれた。




しばらくしてすっかり腫れて重くなってしまったまぶたを隠しながら、その体から離れた。


そこでやっと自分がしでかしたことの大きさに気づき、とにかく謝った。


「ごめん。陸玖にこんなこと言うなんて私本当にありえない」


謝罪の言葉なんかじゃ足りない、そう思っていたのに陸玖は何も言わずになぜか私に謝って来た。


「俺こそごめん。俺、自分の気持ち無理やりお前に押し付けて。
お前がこんなに苦しんでんのにも気づかないで」


「何言ってるの?陸玖は何も悪くない。
悪いのは全部私…」


「違うよ。違うから」


陸玖は苦しそうに否定して、もう帰ろうと、送っていくと申し出てくれた。


おとなしく従って、陸玖の数歩後ろに付いて下宿まで歩いた。


玄関まで送り届けてもらって、陸玖は私の顔をじっと見つめた。


そして決意したような顔で言った。


「ごめん、由姫のこと困らせて。


俺、もう来ないよ。


本当にごめんな」



「…え?」



「じゃあな」



私の返事を待つことなく、最後に泣き笑いのような笑顔を浮かべて陸玖は立ち去って行った。



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