(完)嘘で溢れた恋に涙する


「それから…由姫は声が出ないそうなの。生まれつきのものじゃなくて、精神的なものらしいから、由姫の声が戻るためにも早くここになれるように協力してあげてね」



先生が少し言いにくそうに言葉を途切れ途切れに繋いだ。



私はなんとなく生徒の名前を呼び捨てにするその先生を好きになれる気がした。



何の悪意もなく呼ばれる自分の名が心地いい。



たとえ、それが今だけのものだとしても。



言われた通り声が出ない私はぺこりと頭を下げて、指示された空席に座った。


クラスメイトたちは先生の言葉を聞いた後、少しざわめき、お互いに顔を見合わせながらひそひそと話していた。


私に向けられる視線は痛いほど感じたけど、気づいていないふりで誤魔化した。




その後、時間割の変更や、自転車の乗り方への注意喚起がいくつかあって、ホームルームが終わり、先生は教室から出て行った。


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