(完)嘘で溢れた恋に涙する
その瞬間、わっと音を立てて私の席の周りに輪ができる。



一番近くにいた肌の焼けた女の子がニコニコと笑いながら話しかけてきた。



「由姫ちゃん!よろしくー!うち、加奈!カナって呼んでね!」


慌てて、笑顔を作ると他の子達も続いて話しかけてくる。


「俺、亮介!よろしくなー!」



「由姫ちゃんめっちゃかわいかね!
羨ましかー」



「よろしくー!なんで転校してきたと?お父さんの仕事でとか?」



「てか、なんで声でらんとー?」




特有の方便にうまくついていけない。



そもそも声が出ない私は返事しようがないからいつも常備しているノートとペンを取り出した。



ノートを開けて、ペンのキャップを開けて、返事を書こうとしていると、遠くから私を見ていた女子が近くに寄ってきた。



整った顔立ちのその子は私の前に腕を組んで仁王立ちをする。



周りの子達が隠れてため息をついているのを見て、クラスのリーダー格なんだろうなって一瞬で理解した。



その子は私を上から下まで検査するようにジロジロと眺めて意地悪そうに笑った。



「みんな馬鹿やない?
わざわざこんな田舎に転校してくるとやもん。
理由は1つしかないやん。
あんた前の学校いじめられよったとやろ?そいけん転校してきたっちゃろ?いじめられそうな顔しとるもん」



あながち間違いではないかもしれない。



だけどさっきも言った通り、返事しようにもできなくて無表情のままその子を見つめる。



「聖奈、やめなよ。
由姫ちゃんまだ来たばっかりとばい?
そがんこと言っちゃいかんって」


聖奈と呼ばれるその子の隣にいる女の子が眉をひそめてその肩に手を置くが、聖奈ちゃんは振り払って、また私のことをキッと睨みつける。



「あんたは黙っとって。
そうだ。あんたその声もいじめられたけんでらんくなったっちゃろ?
かわいそー」




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