(完)嘘で溢れた恋に涙する
新しく
体育大会の次の日、無理やりお母さんに島唯一の診療所に連れていかれた。



この島に引っ越して来た日に一度来たことはある。



いかにも島の診療所っぽい古めかしい建物と優しいおじいちゃん先生は好印象だった。




「うん。もう何も心配はないですね。よかったです」




そもそも私はストレス性の失声症だったから、内科に行ったってどうしようもないから聴診器を当てられたりしただけだった。




「ありがとうございました」




お礼を言って立ち上がる。



自分の声と共に喉の震える感覚が懐かしい。



「お世話になりました」



私の隣でお母さんが深々と頭を下げて、私も慌ててぺこりと頭を下げる。



「いえいえ。これからはあまりストレスを溜めないようにね」



先生のその言葉に私は曖昧に苦笑いを浮かべるしかない。



隣で悲しそうに目を伏せるお母さんに申し訳なさを感じる。



ストレスの原因はあの事件のせい。




お母さんは私を守れなかったと思ってるから責任を感じてるんだろう。



お母さんのせいなんかじゃないのに。



事件のせいでもあるけれど、声を失ったのは全て私のせいなんだから。



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