君に恋した
少しの間が入った。

「…え?っと…」

あたしは思わず言葉に詰まる。

な‥なんでいきなりそんなことを?

あたし、なにかしたかな。


そんな、追い詰めたような切ない声で。


「ど‥うしたの?急に‥」

なんとかそう問うと、尚之は我に返ったような声を出した。

『え?…あっ!わりい急に変なこと聞いて!今の、忘れてっ』

「う…うん」


―ねえ、今、あなたは何を思ってそう聞いたの?


あたし、分からないよ。電話越しじゃ…分からないよ。

分かるのは、あなたが悲しそうな声をしていること。

もし笑ってたなら、無理して笑ってること。

何か‥あったの?それとも、ただなんとなく聞いただけ?

「言いたいことがあるなら、あたしに言ってよ‥」

自然と、口に出していた。でも尚之は、

『…ありがとな。だけど、ごめん。言えねぇ。‥今日は、もう切ろう。じゃあな…』


そう言って、あたしの返事を聞かずに切った。

足は止まり、あたしの体中にツー、ツーという音が響いていた。


< 24 / 71 >

この作品をシェア

pagetop