透明人間の色
2 いつかの夏の告白
「待った?」
「待ってねえよ」
お決まりの台詞にお決まりの文句で返した達也は、私との待ち合わせ場所にポケットに手を突っ込んで立っていた。
「で、どこ行くんだよ」
そう言いながら、達也は自然と私に手を差しのべたつもりなんだろう。
でも、私は達也が約束の三十分前にはここに立っていて、右往左往していたのを知っている。
だから、今達也の心臓がバクンバクンと暴れているのが、私には見えるようだった。心なしかその差し出された手も赤いような気もする。
私はまた喜びと罪悪感に支配される。
これから、私は最初で最後のデートをするというのに、その手が愛しくて仕方がないのだ。
私は手を掴んでしまった。
こんな罪悪感は何度も感じてきたのだから、今さらだとそう自分に言い聞かせて。
「じゃあ、まずはね___」