透明人間の色



口早にそう達也の腕を引っ張る。


まだ、あの絵の前に立つ前までは、言えない。


「花」

受付に座っていた花に私は声をかけた。この美術展では作品応募生徒が運営をしている。

「チケット二枚」

「はい。一人三百円ね」

さすが、高校生が描いた絵だけに、値段はリーズナブルである。

「ありがとう」



「うん。___二人はデート?」



「うん」

そう答えた時、一瞬だけ花の目がこちらを睨んでいるように見えた。

「そっか」

そう花が頷くまでのほんのちょっと。

でも、気のせいではないと思う。
背筋が少しゾクッとしたから。

全く知らなかったけど、花も達也のファンなのかもしれない。

「ほら、行くぞ」

達也が言う。

花がもし本当に達也のファンだとしたら、申し訳ない。
だが、これだけは譲れない。



今日は、今日だけは、達也は私だけのものだ。



私は達也の腕をなんの躊躇いもなく掴んだ。



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