透明人間の色
達也が頷いた。
多分達也は散々泣いた私のこととかを思い出してるんだろうけど、私が思い出すのは違う。
「私がさ散々泣いて少し落ち着いて何日かした後だったと思う。達也が私に言ってくれたんだ」
「あぁ。なぜか、お前ありがとうって言って俺から逃げたやつな」
「それ」
忘れているかと思ったら、達也も案外覚えていたらしい。
私たちの分岐点はここにある。
「“お前には俺がいるだろ”って、達也は言った」
「リピートするな」
「真面目な話、それまで私に声をかけてくる人間はさ、全て同情からだった。だから、達也の言葉が同情からじゃなくて本気だってことも誰より分かってた」
「そりゃそうだ。伝わってなきゃ、びっくりだ」
「だけどね、私はその時気づいちゃったの」
「なにに?」
「私が頼れるのは達也しかいないってことを、達也が知ってたことに気づいちゃったの」