透明人間の色
「ん、そっか」
「晶人さんは?仕事どうなの?」
「うーん、ちょっとね」
そう言って少し困った顔で私に笑いかける晶人さんの望む言葉を私はちゃんと知っている。
「今度はどんな人がいいの?」
「今すぐ使える人がいい。あと出来たらイケメン。でも一番は親が無関心そうなのがいいな」
晶人さんは待ってましたと言わんばかりに条件を述べていく。
だが、普段と少し違うことがあった。
「イケメン?」
「うん」
悪びれもなく晶人さんは私に頷く。
「イケメンって?」
「イケてるメンズ?」
私はため息をついた。
晶人さんが何を考えているのかたまに分からない。
「………分かった」
そう答えた時の声が低くてビックリした。だけど、晶人さんは意地悪だからそんなのは見て見ぬふりをする。
「美香ちゃん、お肉美味しい?」
私は答える。
「___知らない」
晶人さんは嬉しそうに頷いた。
「うん。知らないままでいいよ」
謎だ。
晶人さんのことで私の知らないことはたくさんある。
晶人さんは私のことなら何でも知っているというのに。
でも、___私にはこの人しかいない。
それだけは私にも分かっていた。