透明人間の色
自分が描いた絵なのに、どんなに視界がぼやけていようと答えなんか、とっくに知ってるはずなのに、私は霧蒼からその答えだけを聞きたかった。
霧蒼のその不機嫌そうな声で、言って欲しかった。
『開いてる』
視界は完全になくなった。でも、見えなくても、その絵のことなら私は何でも知ってる。
『なに、泣いてんの?』
「…解説、してほしい?」
『別に』
「じゃあ、する」
霧蒼はそれに舌打ちした。絵の中なのにそんなことができるのかと、口許が緩む。
「この絵、霧蒼がモデルなの」
『は?』
「私が見つけたもう一つの正義」
『………意味が分からない』
不機嫌というより戸惑いの声を上げた霧蒼は、確かにその絵の中にいる。
理由は分からない。
夢、幻想、色々考えるけど、霧蒼とその絵は同じものだ。
だから結び付いた。
その窓の内側は色彩豊かなゴチャゴチャした世界があって、そんな窓の外でそれを不機嫌に守っているのが霧蒼の世界だ。
綺麗な真っ青なのに太陽がない世界であり、それは霧蒼以外は誰もいないことを表していた。
その二つの世界を繋ぐ窓はいつだって開いている。
ただ、霧蒼の世界は誰も踏み入れることができない。
偽悪的な正義は、誰も気づけないから。
だけど、願わくは___