透明人間の色
「じゃあ教えてくれるなら、私はこれからずっとその期待に答えようと思う」
『絶対?』
「それは言えない」
私は霧蒼と同じようにそういった約束が嫌いだ。
私たちは無言で睨み合った。
とても長い間見つめている間、私も霧蒼も真っ直ぐな瞳をしていたのだと思う。
やがて霧蒼は私から目をそらさず、独り言のように言った。
『………僕は、東城が僕は正義ごっこをしているだけだと、そう証明してくれることを期待してるんだよ。東城という人を知ってから、ずっと』
少しだけ責めるような口調は、私が霧蒼を正義と呼んだからだろう。
でも、それはあまりに霧蒼の言葉とは思えない。
「正義ごっこなんて、そんなこと最初からしないでしょ」
霧蒼がいつもしているのは悪役ごっこだ。
私と霧蒼はよく似ているけれど、そこが決定的に違う。
そう言うと霧蒼は意地悪そうな口調が返った。
『そうかもしれない』
また、そんな曖昧なことを言う。
まるで私を弄んでいるかのように。
霧蒼が私に期待してるものが、私には分からない。
それが分かれば救われるかもしれない、なんてまたズルいことを考えていたんだけど、やはりそう簡単には偽善者の私は救われない。