透明人間の色
「もう閉まる時間かな?」
私は諦めた。
明日、楓に会って、楓と友達になった本当の理由を話してしまおう。
『経ったかもね』
「そこからちゃんと帰れる?」
『もちろん』
「そう。………じゃあ、ね」
ここはサヨナラと言うべきなのだろう。
だけど、私の口から出たのは中途半端な希望。
それに霧蒼は答えなかった。
いや、沈黙という答えをくれたのかもしれない。
気が向いたらね、とも言ってくれないんだから、きっとそういうことだ。
私は絵にクルリと背を向けた。
帰り道、花と一緒に帰ろうかとか、そんなどうでもいいことを心で唱えて。
平常心を保とうと必死だった。
『………僕はっ』
ちょうど、コーナーを曲がるところ。
霧蒼のありったけの不機嫌さを吐き出したような、大きな声だった。
『小野楓の友達は、君しかいないと思う』
なんだ、それ。
「………そんなのっ」
そんなの知ってる。
楓には私しかいないってこと。
今さら離れるなんて卑怯だってこと。