透明人間の色
霧蒼に指摘されるまでもない。
もしかしたら、という思いが胸をかすめた。
もしかしたら、霧蒼は楓が好きなのかもしれない。
霧蒼が私に期待していたのは、そういうことだったのだ。
楓と友達でいること。
それが霧蒼が私に期待していたのは、そんなもの。
「__そんなのっ、知らないわよ」
気がつけばそう喚きちらしめて、私は頬に伝う何かを拭う。
最近は情緒不安定すぎる。
『僕の絶対的正義を教えて上げようか』
私の感情をまるで無視して、そう言う霧蒼。
霧蒼の絶対的正義を知りたい。
でも、その名はきっと、私がよく知る無邪気な笑顔の女の子だ。
「聞きたくない」
そう言って私は逃げた。
今度の花の声は完全に耳に届かなかった。ただ、ひたすらに私は私を肯定してくれる人の元に駆けた。いや、やはり逃げた。
唯一私を無条件で肯定する、かわいそうなくらい間違ってる彼の元へ。
私は電話帳からその名を探して、コールボタンを押した。
「晶人さん」
コール一回、晶人さんが出た。
その普通を思えば、早すぎる対応に私は気づかない。