透明人間の色
「じゃーね、美香ちゃん。また明日」
美香を部屋まで送り届けて俺は手を振った。
部屋のドアが閉まる。それから一分くらい待って、俺は美香の隣の部屋をノックした。
「はい」
出てきた少年は俺を見て微笑む。
「メール、受け取りました。紫様」
その犬みたいに人懐っこい笑みに、俺は頭を撫でてやりながら言う。
「ん。じゃあ、美香ちゃん、今日はもう外には出ないと思うけど、見張ってて」
「分かりました。何かあれば報告いたします」
「頼むよ。あと、作戦がもうすぐ次の段階に入ると思う。他のみんなにも言っといて」
「はい」
少年は誇らしげな顔で頷いて見せる。
たぶん、俺から与えられるもの全て、こいつの喜びになっている。
だから、この顔はきっと歪んだ顔なのだ。