透明人間の色
この少年は俺が拾った一番最初の駒だ。
このマンションの住人で一番古株で、王があの方で俺が宰相だとしたら、こいつは俺の秘書だと思う。
美香の隣に置いているのも、こいつが一番信用できるからだ。
何せ、こいつを教育して十年くらい経つ。
見た目はこの通り可愛い中学生くらいだが、本当は普通なら高校に通ってるはずの年齢にはもうとっくになっているはずだ。
だが、俺はこいつをずっと俺の駒として育ててきた。
信用できないはずがない。
「いよいよ、なんですね」
「うん。心配?」
「いえ。どちらかと言えばですが、やっとかー、くらいに思ってます」
「そうだな。十年は長い」
「はい」
心地よい沈黙がおりた。
それくらいには、それぞれの十年はそれほど悪くなかったということだろう。