透明人間の色
「一番最初に出会った日、紫様が言ったことが本当になってしまいました」
「なんか言ったっけ?」
「“お前を生かしてるのは、今日から俺だけだ”」
「………我ながら、冴えてるね」
そんな痛いこと言ったのかと思いつつも、こいつがそれが本当になったって言ってるんだから、まあいいやと開き直る。
自分だけが相手を生かしてやれる。
なんて、傲慢な考えだろう。
実際にそんなことができるはずがないのに。
でも、そんな嘘を信じられるように、俺は専用の鳥籠をつくった。
その最終形態がこのマンションだ。
俺は頭に置いた手を放す。
「じゃあ、僕は行くよ」
「はい。後はお任せください」
俺はそれに手を振って答えた。
そして、マンションを後にして俺は車のキーを回した。車体が震える。アクセルを踏んで、俺は来た道を戻る。
美香の側に置いている、もう一人の駒を拾いに。