透明人間の色
「じゃあ、お前にその名を与えたのはなぜか分かる?」
俺はこいつの絶対的価値であり続けるために言った。
「それが分かっていて、なお嫌と言うなら僕は破名、お前を捨てる」
破名の目が揺れた。
俺の心が少し痛むのは、その今破名が覚えている感覚を俺は誰よりも知っているからなんだろう。
違う鳥に餌をあげていることへの嫉妬、自由を許されていることへの羨望。
俺だって、ずっとそれを感じてきたものだ。
あの方の鳥籠に誰よりも長く居て、変わらず餌を与え続けられているのは、この俺。
美香が現れたところでそれは変わらない。
囚われ続ける鳥の感情を表す言葉は、たぶんない。
恋でも、愛でも、憧れでもない。
そんな目に見えないものに囚われ続けるのを望む、この気持ち悪い集団が日本を変える。
それは正義だと言い張るために、俺は美香に望むのだ。
偽善者嫌いの彼女も、結局は偽善者なのだと、そう証明して欲しいと。
でも、そうじゃなくても良いと俺が言えるのは、間違いなく愛という感情を彼女へ持っているからなんだと思う。
それは、なんだか笑っちゃうくらいに変な話だけど、それが俺の本当だ。
「………分かりました」
暫くの沈黙の後、彼女は言った。当然だ。彼女は従わざるを得ない。
鳥籠の外に、自分を可愛がってくれる人がいないことをちゃんと分かっている。
だから結局、彼女は優秀なのだ。