透明人間の色
でも、大切なただ一人の友人だからこそ、美香の口からそれを聞いたときにちゃんと笑えるよう、私は予め聞いておくべきなのだ。
電話帳で笹本達也の文字を見つけるのは一瞬だ。上が三番目にその名前が来ている。それより上の二つは両親だ。
笹本達也の下には東城美香。
一回も繋がったことがない番号だ。
私は一人苦笑いを浮かべた。
コールボタンを押すと呼び出し音が部屋に響く。
五回目のコール音の後、それが切れた。
『………もしもし』
「あっ、達也くん。こんな時間にごめんね」
『ほんとな』
「風邪?声枯れてるけど」
『___違うと思う』
「そっか。良かった」
なんだかテンション低い達也くん。
これはデートしたけど、付き合うとかにはならなかったってことなのかな。
「えっとさ、聞きたいことがあって」
『なに?』
「あー、明日美香と会う?」
私だけ誘われているとしたら、なんだか申し訳なくなるから、変な聞き方になってしまった。
でも、そんな罪悪感なんて吹っ飛ぶくらいの答えが返ってきた。
『___もう、一生会わないかもしれない』